秋田県 スタジアムの建設について考えよう!③ 「維持費と収支」・「ルール」を変えちゃえば?
2021.07.19
おはようございもん。
これまで2つ、スタジアム建設についての記事を書いてきましたが今日でラストです。
前々回の記事 >>秋田県 スタジアムの建設について考えよう!①
前回の記事 >> 秋田県 スタジアムの建設について考えよう!②「雇用」「教育」「娯楽」の三位一体!
前々回の記事ではスタジアム建設にかかる費用についてで、前回の記事は民間企業誘致に5Gの技術を使った施設なんてどうか?「雇用」「教育」「娯楽」の3セグメントを満たす施設にするのはどう?という提案について書きました。
今日は維持費がどれくらいかかり、収支がどれくらいになるのか行政が予測している資料を見ていきます。また、それを見てどうすれば建設の可能性があるのか?について私の考えを書いていきます。
今回も平成31年2月の「新スタジアム整備構想策定協議会報告書」を見ながら考察していきます。
維持費
では上記の資料の中から、施設・維持費に関する箇所を抜粋してどのくらいお金がかかるのかを見ていきましょう!
◇資料によると、スタジアム建設時に「望ましい施設及び機能」として
①全天候型屋根(フィールドまですべて覆う屋根)
②ホスピタリティスペース
③インナーコース
④大容量高速通信設備
が挙げられています。
◇「運営主体及び運営手法に関すること」として
スタジアム本体については行政による直営または「指定管理者制度」が考えられ、商業施設等の設備を設ける場合は民間資本などの参入を検討する必要がある。
※指定管理者制度
公の施設の管理・運営を、株式会社を始めとした営利企業・財団法人・NPO法人・市民グループなど法人その他の団体に代行させることができる制度のこと。
- 利用時間の延長など施設運営面でのサービス向上による利用者の利便性の向上。
- 管理運営経費の削減による、施設を所有する地方公共団体の負担の軽減。
等が目的とされる。これを利用することで多様化する住民ニーズに応える民間のノウハウを活用できるとともに、行政の経費を削減することができます。
◇維持管理費(年間)は
国内既存スタジアムの実機を参考にして算出したとされ
単位:百万円
1万人収容、全天候型屋根なし 9400万円
1万人収容、全天候型屋根あり 1億1000万円
1.5万人収容、全天候型屋根なし 1億2200万円
1.5万人収容、全天候型屋根あり 1億4400万円
”
とされています。
1番気になった項目が「全天候型屋根」の有無に関してです。維持管理費で見てみると、屋根の有無で年間の維持費が1万人収容のスタジアムで1600万円の差が、1.5万人収容のスタジアムで2200万円の差が出ていますね。施設の利用目的をサッカーの利用のみとするならば屋根なしにするのが現実的かと思いますが、前回の記事でも書いた通り、民間を含めた運用を考えるのならば利用用途を明確にした上で屋根を設置するのはありだと思います。
次は収支についてみていきましょう。
収支について
収支の予測を見てみましょう。自治体が公開している表を引用します。

八橋運動公園の場合、全天候型屋根なしなら5100万円、全天候型屋根ありなら6700万円の赤字。
プライウッドの私有地の場合、全天候型屋根なしなら8400万円、全天候型屋根ありなら1億円の赤字。
となっております。
建設候補地が外旭川になってからの資料はまだ見れていないのですが、概ね八橋運動公園と同じくらいになるんじゃないでしょうか。人口が減少しているエリアの自治体が運営するのであれば、毎年億円近い赤字になる施設の設置は現実的じゃない気がします。「夕張市」の財政破綻の例があるのですが、夕張市が財政破綻となったいくつかの理由のうちに「観光施設過大投資」と「歳入の減少」がありました。観光客の誘致の為に建設した施設が採算をとれず毎年お金を食ってしまう施設になってしまったのです。また、歳入の減少に関しては、人口の急激な減少に伴い的確な対応ができなかったようです。人口が減少している多くの地区は公共事業には慎重になるべきと考えられているのでやはり自治体による丸抱えは難しいでしょう。
では次は、補足として自治体の歳入ってどうなっているのかについて一部を記載します。
補足:自治体の歳入
自治体の歳入の中で最も大きな部分が「地方税」です。これは住民と企業が直接収めている税金で、頭割(均等割)と所得に応じての2種類があります。割合としては所得に応じたものの方が大きいです。そのため、景気が悪くなったり人口が減っていったりすれば税金も減っていきます。これがかなり厄介な問題です。
「地方消費税交付金」は消費税8%のうち1.7%分は都道府県や市町村の収入として分配されてます。実は、消費税10%への引き上げが見送られたときに地方自治体は頭を抱えることとなっておりました。
「地方交付税」はそれぞれの自治体の財政力に応じて、国から配分される税金です。団体によって財政力が異なりますが、どの自治体であってもある一定のサービスを維持する必要があるため国が交付します。自治体の財政力が低いほど多く貰え、財政力が高い団体は至急が少なくなります。
秋田県の人口は2050年には半分になるという予想がされており、したがって地方税と地方消費税交付金の税収も今の制度のままでは半分近くまで落ち込む見込みです。高齢化が進む地域ですのでその税収の利用用途は高齢者の福祉に使われる可能性が高いでしょう。
どうすれば建設を実現できるのか?
さて、ここまで見ていって、繰り返し自治体での運用が難しいという結論を書くこととなってしまいました。しかし私としては、スポーツでの活性化は非常に好ましいものと考えており、できることなら実現してほしいとも思います。
「指定管理者制度」を使って自治体の負担を減らす。費用を自治体と民間企業で折半する。利用頻度と収益性が高い企業を誘致しつつ最低限の設備で抑える。県の生産人口とスタジアムを利用する人口を増やす。
といったところが最低限必要ではないかと思います。
ただ、書いている途中に思いついたのですが、「設備の拡張」は手段であって、本来の目的は「リーグの昇格」ですよね?ならば設備投資をしないままリーグを昇格し、運用時の利益を使って後から必要な分だけ施設を拡張する、なんてできたら一番いいのではないのでしょうか?つまり「ルールを変えてしまう」ことができれば一番成長性も収益性も高い結果になるのでは?と感じたので、まず今の課題を生み出している「ルール」について調べてみました。
クラブライセンス制度・ルールを変えてしまう
実はこのJ2、J1へ昇格の為のスタジアム設備関連で声が上がっているのは秋田県だけではありません。
岩手県のサッカークラブの例だと、
・「スタジアム基準の改定」により照明設備を設置しないと、チームはJリーグから除名される。
・拠点施設の収容人数がJ2基準に満たないためこちらも同様に好成績をだしてもJ2に昇格できない。
・そしてクラブは盛岡市に、スタジアム整備の要望書と14万人の署名を提出した。
かなり秋田県の例と似ていますよね。
私が思うにルールの方を変えてしまうのはどうでしょうか。もちろんかなーり難しいことだとは思いますが。事実として、スポーツで街の活性化を目指す地方都市は複数存在するもののそれらは財源確保が最大の課題となっております。
J1、J2はインターナショナルライセンスでAFC(アジアサッカー連盟)のクラブライセンスに準じたルールになっていて、FIBという第三者の弁護士、会計士などの方々が判定しています。これは「クラブライセンス制度」に基づいたルールで、ドイツサッカー連盟が毎年全クラブのリーグ戦への参加資格をチェックするための基準として導入したのが始まりで、FIFA(国際サッカー連盟)も2007年にクラブライセンス制度を承認し、その後AFCもこれを承認したのでした。
AFCの制度に基づき、「競技」「施設」「組織運営・人事体制」「財務」「法務」の5分野において一定の基準により審査を行い、第一審機関 (FIB) がライセンス交付の決定を行います。
アジア最大の大会であるAFCチャンピオンズリーグへ参加するためにこの基準を満たす必要があるわけです。2000年以降のこの大会で日本のチームでは浦和レッズ、ガンバ大阪、鹿島アントラーズが優勝をしていますね。
「J3とJ2のライセンスの幅を縮めることはAFCとの兼ね合いがあるため難しく、Jリーグだけでは決められない」、と言われているものの、AFCチャンピオンズリーグの出場権が与えられるのはJ1クラブのみなので、J2のスタジアム等設備に関する基準だけでも下げられないものなのでしょうか?
勿論こうしたルールは「リーグの質を守るために必要」であって、国際戦に出場するJ1は厳しくて然るものかと思いますが、国内線が主なJ2、J3において、本来競技成績で決まるべきものが設備基準によってその機会が奪われるのはもったいないことです。
今後人口が減少していく日本においてこの問題は結構根深いです。結局スタジアムを造ったとしても、安定的に満席近くの集客をできるイベントを開催することは、安定的な利益を上げ続けることは多くの地方都市では難しいことでしょう。スポーツによる活性化をしたいのに、活性化を実現するためには赤字になってしまうという本末転倒な状況に繋がっているのではないでしょうか。
リーグの質を守ることはとても重要と理解する者の、その規範が一つの参入障壁としても機能しています。あまり厳格なルールのまま進めていくと、確実に人口が減っていく日本ではクラブライセンス規定に適応できない団体が増えていって、サッカー界全体の盛り上がりが廃れていってしまうのではないかなぁ。
地方からスタジアムが消えていく。日本のサッカー人口が減っていく。カズ選手のようなサッカーのスターや、野球で言う大谷選手みたいなモンスタープレイヤーが現れにくくなる。そうなると寂しいですよね。
なので、行政へ金銭的に難しいお願いをするよりも、その斜め上へ。各サッカー団体やファンの方々から日本サッカー協会へルール改正の声を届けてルールの一部を改正してもらう、の方が経済全体の向上や業界の未来に繋がるのではと思います。私がここに書いているだけでも仕方がないので、どなたか発言力のある人が変えていってくれればと思います。
今の設備のままJ2に昇格!地元サポーターの応援と選手の努力もあり地元チームが成長していく!人気チームになってスタジアムがパンパンに!さぁ確実に黒字になるので設備を拡張しましょう!そしてやがてはJ1に!みたいな流れになったら嬉しいですね。
様々な既得権益があったり、多くの団体が絡んでいることなので、ルールを変えよう!なんて簡単にはいかないでしょうけど。
おわりに
これまで長々と書いてきましたが内容を整理するとあまり大したことは書いていませんが、この記事をみて、実際の数字に触れてみて、誰かの考えることのタネになったり、私の考えを見て、そういう意見もあるね、とか、こういうのはどうか?という新しい提案を誰かがしてくれたりしたら嬉しいです。
まとめると
・収支の予測から行政の丸抱えは難しい(現実)
・指定管理者制度の利用や民間企業の誘致が必要(現実)
・5Gやスポーツ科学の先端施設としての複合的な利用による企業の誘致など収入源を増やす。産関連期の施設の誘致で学生も生産人も増やす。(私個人の考え)
・もしくはルールの一部を改正してしまう。J3とJ2の基準を変えてもらい設備による参加条件を撤廃し現状の施設の利用若しくは最低限の改装で行えるようにする。(私個人の考え)
これくらいのことを書いてきましたね。
個人的には「ルールを変えてしまう」というのを推したいです。厳格な方々や伝統を重んじる方々には怒られてしまいそうな気もしますが。時代が変われば状況も変わるのです。従来の仕組みの中で新しい芽を育むことの難しいなら、時代と状況に合わせてルールも進化しアップグレードされるべきだと思うんですよね。
また、スタジアム運用の固定費が減ればその分選手の育成や支援、コマーシャルにも予算を割けるはずです。かけるべきところにはガンガン投資するべきですが、かけなくてもいいのならば何事もお金はかからない方がいい、出費は抑えた方がいいという考えもあります。
ルールを変える、なんて突拍子もないことに聞こえるかもしれませんが、今の世の中を支えるルールの多くは戦後~2000年代くらいまでに作られたものです。2000年代以降は世界の人口構成や、スマホを始めとするテクノロジーの大頭で大きく変わりました。今回の件のみならず、ルールが変わってくれればうまくいくことって沢山あると思うんですよね。
さてさて、長くなりましたがこの辺にしましょうか。
私自身サッカーの試合観戦に行った時がないのですが、今回色々調べてみたらとても興味がわいてきたので今度観に行ってみようかなと思います!
へばなー!
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