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宗教的観点から見たナマハゲの特異性と面白さについて

2021.09.06

秋田県と言えば、男鹿のナマハゲが全国的に有名ですよね。私はナマハゲが大好きです!異質な見た目のみならず、その起源の伝説や地域との結びつきと言った文化的な面でも非常に惹かれます。秋田県に生まれ秋田県で育ったので、その存在が身近故に子供の頃は気が付かなかったのですが、ナマハゲの文化って世界的に見てもとてもユニークで面白いです。今回は皆様にもナマハゲの面白さをより知ってもらえるように、いくつかの面からナマハゲについて書いていこうと思います!今回は宗教的な側面から見た点について、次回は実際に地域にいるナマハゲとその伝説なんかに書いていこうと思います。ぜひ読んでいってください。

 

「来訪神」という種類の神様

ナマハゲは「来方神」と呼ばれる神様の一種です。それらは年に一度、決まった時期に人間の世界に来訪するとされる神々で、日本の来訪神行事が10件「来訪神:仮面・仮想の神々」としてユネスコ無形文化遺産に登録されています。多くは仮面に仮装した畏敬の姿で現れ、厄を払ったり幸福をもたらすとされています。男鹿のナマハゲの他に、石川県の能登のアマメハギや、鹿児島県の甑島(こしきしま)のトシドン、沖縄県の宮古島のパーントゥなんかが有名ですね。

 

どことなく溢れる人間臭さ

私がナマハゲで好きな部分って、彼ら来方神の妙な「人間臭さ」です。来訪神は勿論神様なんだけど、いい意味で神っぽくないところと言えばいいかなぁ。ナマハゲや鹿児島のトシドンは恐ろしい形相をしている割に、仮装から人間の手足が生えている姿がなんとも可愛いと思ってしまうんですよね。ナマハゲは特に、山から下りてきて民家に上がり込んで、勉強をしているかと子供を叱ったりするわけですが、それもまた人間臭い。

 

アミニズム的な地域の独創性がある

「神」として知られているように、これら行事は宗教行事の1つであると私は考えています。ただ、それはキリスト教、仏教、イスラム教といった3大宗教のような形式的なモノではなく、地域に根差したアミニズム(生物・無生物を問わない全てのモノの中に霊魂、もしくは霊が宿っているという考え方)的な、権威から離れた住民の住民による住民のための宗教行事のように感じられます。権威から離れていることが独自な文化を育むために重要で、「神がそう言っているから」と規範を立てるわけでなく、住民たちが好きで行うからこそ独創的な文化が生み出されると考えられます。

 

シャーマニズムとの類似点と相違点

そしてもう1つ、シャーマニズムというモノがあります。シャーマンと呼ばれる、善霊や悪霊の世界にアクセスして影響力を持つと考えられている人々がいます。典型的には儀式の際にトランス状態に入り、占いやヒーリングを行う人のことです。彼らは魂を修復することで病気や疾患を治療すると言われています。また、コミュニティを悩ませている問題の解決策を得るために超自然的な領域や次元に入るとされます。日本で言うと自然とのかかわりが深いアイヌの文化や、沖縄の霊媒師のイタコさんの文化が非常にこれらに近いです。沖縄のナマハゲ行事において、ナマハゲに扮する人は酒を飲み家々を回るわけですが、シャーマンは古来よりアルコールや自然由来の化学物質の摂取と言った感覚に影響を及ぼすモノを摂取し、常時とは異なる精神状態で儀式を執り行う点が非常によく似ています。

 

霊の世界にアクセスするシャーマニズムとの相違点は、霊や神と対話するのではなく、人が実際に神の姿を模し行事を執り行う点にあります。クラシックな宗教行事のようにご神体を奉るわけでもなく、霊と対話をするわけでなく、本当に人が神様を演じて地域の問題を解決していく。ここが特殊で、非常にユニークに感じられます。

 

都といった権威からの「距離」で生まれた独自性

宗教は、近代科学が発展する以前には人々を取りまとめる一つの規範やよりどころとして機能していました。強く言えば「私たちは何ぞや」という私たちを私たちたらしめる概念です。多くの宗教は3大宗教の大頭と共にそれらに吸収され、あるいは忘れ去られ姿を消していきましたが、秋田県の男鹿と言う小さな地域にまだ原始宗教に近しい概念が残され大切に扱われている。これってとても尊くて面白いことなんですよね。

 

このような特異な文化が醸成される背景には都から離れていることが条件のうちの1つです。近代まで大都市圏では人々の行動や思考を統制するために宗教の力を用いました。キリスト教やイスラム教における一神教による宗教的規範は大勢の人々を統制することに強く効力を発揮しました。一方でアミニズム的な、多神教的な、火の神や山の神と言った地域の神々に基づいた宗教は限定的な範囲に効力を発揮します。大都市から離れている=都の統制が行き届いていないからこそ地域の自由な発想で神様や文化が作られるわけです。特に秋田県は都からの物理的な距離が遠いだけでなく山脈に隔離されているため猶更特異な文化が生まれやすかったのでしょう。

 

おわりに:自然と人が織りなすナマハゲロマン

男鹿の地域の生活の中で育まれた文化の1つがユニークなナマハゲです。山が多い半島内部の集落は山々によって分散され、その中で集落ごとに沢山のナマハゲが生まれてきました。切り立った地形に囲まれ、冬は寒い、そんな環境の中で自然と人とが向き合って来訪神ナマハゲが誕生したのかなと、ある種のロマンを感じてしまいます。

 

今回は宗教的観点から見たナマハゲの面白さに関して書いていきましたが、次回はナマハゲ自体について詳しく書いていきます。ナマハゲの起源とか、どういうナマハゲがいるのか?とか。「ナマハゲ伝道師」にあってきたお話についても書いていきましょう。本日もご愛読ありがとうございました。

 

へばな!

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